フトアゴの鼻はどれくらい敏感?

「フトアゴヒゲトカゲって、どれくらい匂いがわかるの?」
この疑問、実は多くの飼育者が一度は感じたことがあるのではないでしょうか。

一般的に、フトアゴは視覚主導の動物と言われています。しかし、最新の研究はこう問い直します。
「本当にそう?」

今回は、フトアゴの嗅覚の仕組みと、それがどのように行動に影響を与えるのかを、科学の視点から深掘りします。


フトアゴの嗅覚の仕組み

🔍 【ポイント1】オルファクトリーバルブ(嗅球)

フトアゴの脳には、哺乳類同様に嗅球(olfactory bulb)が存在。これが匂い情報の処理センターです。

さらに、爬虫類特有のヤコブソン器官(鋤鼻器)も発達。舌をペロッと出して情報を拾い、この器官に送っています。

✔ 結論 → 「匂いはちゃんと感じている」


🧠 最新の脳科学研究

2022年の論文(Hain et al.)によると、フトアゴの脳には嗅覚情報を処理するニューロンが特定のクラスターとして存在
→ 嗅覚が、捕食・探索・縄張り認知に重要であることが示唆されています。

🧠 脳部位 機能
Olfactory bulb 匂いの認識と処理
DVR 視覚と匂いの統合
Amygdala類似核 危険や快の感情処理

🦎 フトアゴが匂いを使う場面

✅ 食べ物の探索

→ 舌をペロペロ出して、食べ物の匂いを確認。特に新しい食べ物に対して反応が強い。

✅ 仲間の認識

→ 他の個体の糞やケージの匂いを嗅いで、「ここは誰の縄張りか」を把握。

✅ 環境の確認

→ 新しい場所や新しいアイテムには、まず舌でペロペロ → 嗅覚による安全確認。


🧪 論文からの証拠

  • Pereira et al. (2024)
    「食事エンリッチメントが行動に大きな影響」→ 香りの強い食材ほど接近・探索行動が増加。

  • Moszuti et al. (2017)
    「新奇刺激への反応は匂いにも依存する」→ ケージ内に新しい匂いを入れると、興味行動が急上昇。

  • Hain et al. (2022)
    「オルファクトリーバルブのニューロンは高機能」→ 嗅覚が社会行動と結びついている可能性。


💡 実際の飼育現場では?

飼育者の体験談でも、以下のような話は多いです。

  • 「野菜にハーブを混ぜたら食いつきが良くなった」

  • 「新しい木の枝を入れたらずっとペロペロしてた」

嗅覚は間違いなくフトアゴの行動に作用しています。


🚩 視覚優位?嗅覚軽視は間違い?

従来の「視覚主導」という認識は正しい。
しかし、視覚だけではなく、「嗅覚+視覚+触覚」が組み合わさって行動が成立していることが最新の科学で示されています。


✅ 次回予告

次回は…
「安全?危険?爬虫類に使える精油・使えない精油」
→ 実践に向けての最重要ポイント、「使ってはいけない香り」「安全な植物」の具体リストを公開します。


🔗 参考文献

  • Hain et al., 2022 – Molecular diversity and evolution of neuron types

  • Pereira et al., 2024 – Inclusive Enrichment for Dragons

  • Moszuti et al., 2017 – Response to novelty as an indicator of reptile welfare

  • Wilkinson, S.L., 2015 – Reptile Wellness Management